Logic Proのバウンス画面にある「ディザリング」。名前だけでは、オンにした方がよいのか迷いますよね。
まず確認したいのは、完成ファイルのビット深度です。24bitの音源を16bitにして渡す場合は、ディザを使う場面です。EQや音量調整を終え、最後に16bitへ書き出す段階で設定します。
ここではMac版Logic ProのAppleユーザガイドをもとに、16bitのWAVを作る場合の確認点を整理します。実機での音質比較ではありません。
ディザは、ビット深度を下げるときのひずみを抑える処理
音声のビット深度を下げると、音の振幅を表す段階が少なくなります。その際の丸めによって生じるひずみを抑えるために、小さなランダムノイズを加えるのがディザです。
ノイズを加えると聞くと逆効果に思えますが、狙いは、信号に結び付いたひずみを目立ちにくくすることです。曲を大きな音にしたり、失われた音を復元したりする機能ではありません。
ビット深度を下げた影響を確認するなら、フェードアウトやリバーブが消えていく部分など、小さな音が続く箇所が候補になります。この仕組みと使うタイミングは、iZotopeのディザ解説でも説明されています。
16bitのWAVを書き出すときの順番
たとえば、24bitで録音・制作した曲を、16bit指定で納品する場合です。
先に確認すること
納品先が指定するファイル形式、ビット深度、サンプルレートを確認します。「WAVなら16bit」とは限らないので、指定が24bitなら勝手に16bitへ下げないようにしましょう。
- EQ、コンプレッサー、音量、フェードなど、音を変える調整を終えます。
- マスターに挿したプラグインで、すでにディザを有効にしていないか確認します。
- 「ファイル」→「バウンス」→「プロジェクトまたは選択範囲」を開きます。
- 「用途」で「圧縮なし」を選び、「ファイルタイプ」をWAVE、「ビット数」を16ビットにします。サンプルレートも納品指定に合わせます。
- Logic側でディザをかける場合は、「ディザリング」で使う方式を選び、書き出します。
ディザをかける場所は、プラグイン側かLogicのバウンス側のどちらか一方にします。両方を有効にして、同じ信号に重ねてかけないようにしてください。
プラグイン側でかける場合は、その後に音量調整やサンプルレート変換が入らないようにします。サンプルレートも変える必要があるなら、先に変換を済ませてから、最終の16bit化とディザを行ってください。
書き出した16bitファイルを後からEQで直すより、元のプロジェクトへ戻って修正し、そこから最終ファイルを作り直す方が、処理の順番を管理しやすいですね。
POW-rの番号は「音質の順位」ではない
Logic Proには、POW-rの各方式やUV22HRがあります。POW-r #2と#3は、ノイズの周波数分布を変えるノイズシェイピングを使う方式です。
番号が大きいほど、どの曲にも向いているという意味ではありません。Appleも、素材と好みによって適した方式が異なるため、同じ素材で聴き比べるよう案内しています。
各方式の詳細と、同じ信号へ複数回ディザをかけない注意は、Appleのディザアルゴリズム解説で確認できます。
24bitの書き出しや、マスタリング前のデータは?
「24bitならディザは絶対に不要」と一律には言えません。DAW内部の浮動小数点処理から固定小数点の24bitへ書き出す場合も、ビット深度を下げる処理になり得ます。
ただ、ここで紹介した16bit向けの設定を、そのまま制作途中のファイルへ使うのは避けたいところです。マスタリングを依頼する場合は、受け取る側が指定するビット深度とディザの扱いを確認してください。
サンプルレートの変更とは別です
48kHzから44.1kHzへの変更と、24bitから16bitへの変更は別の処理です。サンプルレートの数値だけを見て、ディザを使うか決めないようにしてください。
まずは納品形式と、マスター側のディザ設定を確認してみてください。16bitへ仕上げる場所を一つに決めておくと、二重に処理してしまうのを防ぎやすくなります。
曲全体を書き出すバウンスと、トラックを音声化するBounce in Placeの違いは、こちらで整理しています。








