教則系 PR

ツーファイブ進行の基礎と応用

記事内に商品プロモーションを含む場合があります
目次
  1. はじめに:音楽の万能薬「ツーファイブ進行」
  2. ツーファイブ進行の基本理論
  3. 基本形のツーファイブ進行
  4. ツーファイブ進行のバリエーション
  5. ジャンル別ツーファイブ活用法
  6. ツーファイブの連鎖と転調テクニック
  7. 初心者向け:ツーファイブの練習方法
  8. 中級者向け:アレンジテクニック
  9. 上級者向け:現代的アプローチ
  10. DTMでのツーファイブ制作テクニック
  11. 実践的作曲エクササイズ
  12. よくある間違いと対処法
  13. 楽曲分析:名曲でのツーファイブ使用例
  14. まとめ:ツーファイブをマスターして音楽表現を無限に広げよう

はじめに:音楽の万能薬「ツーファイブ進行」

「なぜジャズミュージシャンはツーファイブ進行を愛用するのだろう?」

その答えが、今回解説する「ツーファイブ進行」(ii-V)の持つ圧倒的な汎用性と美しさにあります。この進行は、ジャズだけでなく、ポップス、R&B、アニソンまで、あらゆるジャンルで使われる「音楽の万能薬」とも言える存在です。

ツーファイブ進行とは?
キーCの場合:Dm → G
度数表記:ii → V
特徴:最も強力な「緊張→解決」の関係

この記事では、ツーファイブ進行の基礎理論から実践的な応用テクニックまで、初心者から上級者まで活用できる内容を詳しく解説します。

ツーファイブ進行の基本理論

1. なぜツーファイブが最強なのか

ツーファイブ進行の理論的根拠

  • ii(Dm):サブドミナント機能、適度な不安定性
  • V(G):ドミナント機能、強い解決欲求
  • 共通音の存在:DmとG7にはFとDが共通
  • ルート進行:D → G の完全4度上行(完全5度下行)

2. 機能和声学での位置づけ

古典和声での役割

• サブドミナント準備
• ドミナント確立
• トニックへの強い導音効果

現代音楽での発展

• テンション和音の活用
• クロマチックアプローチ
• 転調の橋渡し役

基本形のツーファイブ進行

メジャーキーでのツーファイブ

キーCでの基本形コード進行:Dm → G → C
度数表記:ii → V → I
効果:安定感のある自然な解決

この進行の美しさは、各コードが次のコードへ自然に流れる「ベクトル」を持っていることです。

マイナーキーでのツーファイブ

キーAm(ハーモニックマイナー)での例

コード進行: Bm♭5 → E7 → Am
度数表記:   ii♭5 → V7 → i
特徴:       よりドラマチックで緊張感のある響き

ポイント
マイナーキーでは、ii♭5(ハーフディミニッシュ)コードを使用することで、より強い解決感を得られます。E7のG#音がAmへの強い導音として機能します。

ツーファイブ進行のバリエーション

1. テンション追加によるバリエーション

段階的なテンション追加

基本形:   Dm    → G     → C
発展形1:  Dm7   → G7    → CM7
発展形2:  Dm9   → G13   → CM7
発展形3:  Dm11  → G7alt → CM7#11
現代形:   Dm9   → G7♭13 → CM7add6

各段階での響きの特徴:

  1. 発展形1:ジャズスタンダードの定番サウンド
  2. 発展形2:リッチで温かみのある響き
  3. 発展形3:現代ジャズ・フュージョン系
  4. 現代形:ネオソウル・現代R&B系

2. クロマチックアプローチとサブスティテューション

高度なアレンジテクニック

原形:        Dm7    → G7     → CM7
サブスト:    Dm7    → D♭7    → CM7  (トライトーン代理)
クロマティック: Dm7  → G7/B   → CM7/E (ベースライン重視)
拡張:        Dm7    → F#°7   → G7    → CM7 (ディミニッシュ経過)

3. リズミックバリエーション

4/4拍子での配置

| Dm7  | G7   | CM7  | CM7  |
| Dm7  Dm7 | G7   G7 | CM7  | CM7  |
| Dm7  | G7   G7 | CM7  | CM7  |

3/4拍子での応用

| Dm7  | Dm7  | G7   |
| G7   | CM7  | CM7  |

ワルツ的な優雅な流れ

ジャンル別ツーファイブ活用法

1. ジャズでの使用法

ジャズスタンダードでの典型例

「Autumn Leaves」型:
| Cm7  | F7   | B♭M7 | E♭M7 |
| Am7♭5| D7   | Gm   | Gm   |

連続するツーファイブで転調を重ねる

2. ポップス・R&Bでの使用法

現代ポップスでのアプローチ

ネオソウル風:
Dm9 → G13 → CM7add9

R&B風:
Dm7/G → G7sus4 → CM7/E

ポップス風:
Dm → G/B → C → C/E

3. アニソンでの効果的な使用

アニソンでの活用ポイント
• Bメロからサビへの橋渡し
• 間奏部分での転調
• エンディングでの感動的な解決
• キャラクターソングでの感情表現

ツーファイブの連鎖と転調テクニック

1. ツーファイブチェーン

連続するツーファイブで転調

キーC → キーF → キーB♭:
| Dm7  | G7   | CM7  | C7   |
| Gm7  | C7   | FM7  | F7   |
| B♭m7 | E♭7  | B♭M7 | B♭M7 |

各ツーファイブが次の調への架け橋

2. セカンダリードミナントとしての活用

一時的転調での使用

キーC内での一時的なツーファイブ:
| CM7  | Am7  | Dm7  | G7   | CM7  |
             ↑ ii   ↑ V   (キーCへのツーファイブ)

| CM7  | E7   | Am7  | D7   | G7   | CM7 |
        ↑           ↑ ii  ↑ V   (キーGへのツーファイブ)

3. モーダルインターチェンジとの組み合わせ

借用和音を含むツーファイブ

平行調からの借用:
キーC: | Dm7  | G7   | Em7  | Am7  |
       | Fm7  | B♭7  | CM7  | CM7  |
              ↑ 平行短調(Cm)からのツーファイブ

初心者向け:ツーファイブの練習方法

ステップ1:基本形の完全習得

12キーでの練習順序

1. C  : Dm → G → C
2. G  : Am → D → G
3. F  : Gm → C → F
4. D  : Em → A → D
5. B♭ : Cm → F → B♭
6. A  : Bm → E → A
... (全12キー)

ステップ2:ボイスリーディングの練習

スムーズな声部進行

Dm7: D-F-A-C
G7:  D-F-G-B  (共通音D,F維持)
CM7: C-E-G-B  (共通音G,B維持)

最小限の動きで美しい進行を

ステップ3:リズムパターンの習得

ビギナー向け

全音符での練習
各コード4拍ずつ

中級者向け

8分音符アルペジオ
コンピング練習

中級者向け:アレンジテクニック

1. テンションノートの効果的な使用

テンション選択の指針

  • Dm7に追加可能:9th, 11th (avoid 13th)
  • G7に追加可能:9th, 11th, 13th, b9th, #9th, #11th, b13th
  • CM7に追加可能:9th, #11th (avoid 4th), 6th

2. ベースラインの創造

効果的なベースライン例

基本:     D → G → C
ウォーキング: D → E → F# → G → A → B → C
クロマティック: D → D# → E → F → F# → G → G# → A → B♭ → B → C

3. リハーモナイゼーション

中級者向けTips
Dm7をDm7♭5に、G7をG7altに変更することで、より現代的でテンション感のあるサウンドが得られます。特にマイナーキーへの解決時に効果的です。

上級者向け:現代的アプローチ

1. アッパーストラクチャートライアド

複雑な響きを簡単に

Dm11として:
左手: Dm7 (D-F-A-C)
右手: Em/D (E-G-B over D bass)

G7altとして:
左手: G7 (G-B-D-F)
右手: D♭/G (D♭-F-A♭ over G bass)

2. ポリコードアプローチ

分数コードによる高度なサウンド

Dm11 = Em/D
G7♭13 = F/G
CM7#11 = D/C

右手と左手で独立した和音を演奏

3. メトリックモジュレーション

時間軸での複雑化

4/4拍子: | Dm7  | G7   | CM7  | CM7  |
3/4拍子: | Dm7  | Dm7  | G7   | CM7  | CM7  | CM7  |

異なる拍子感での同一進行

DTMでのツーファイブ制作テクニック

MIDIプログラミングのコツ

リアルなベロシティ設定

Dm7の構成音:
D: velocity 90 (ルート、しっかりと)
F: velocity 85 (3rd、やや控えめ)
A: velocity 88 (5th、安定感)
C: velocity 82 (7th、柔らかく)

G7の構成音:
G: velocity 95 (ルート、推進力)
B: velocity 90 (3rd、明確に)
D: velocity 85 (5th、共通音として繋ぎ)
F: velocity 92 (7th、解決への導音)

音源とエフェクトの選択

ジャズ系

• アコースティックピアノ
• ウォームリバーブ
• 軽いコンプレッション

現代系

• エレピ + シンセパッド
• コーラス + ディレイ
• サイドチェイン

実践的作曲エクササイズ

課題1:16小節楽曲の構築

ツーファイブを軸とした楽曲構成

A: | CM7  | CM7  | Am7  | Am7  |
   | Dm7  | G7   | CM7  | CM7  |
B: | Em7  | A7   | Dm7  | Dm7  |
   | Dm7  | G7   | CM7  | CM7  |

各行でツーファイブ(またはその変形)を使用

課題2:転調を含む楽曲

ツーファイブチェーンでの転調練習

キーC:
| CM7  | Am7  | Dm7  | G7   |
キーGへ転調:
| Em7  | A7   | Dm7  | G7   |
キーCへ復帰:
| Dm7  | G7   | CM7  | CM7  |

よくある間違いと対処法

初心者が陥りやすいミス

注意すべきポイント
1. ベースラインが跳躍しすぎる
2. テンションの使いすぎで濁る
3. リズムが単調になる
4. 解決先のコードとの関係を考慮しない

改善のための具体的アドバイス

解決策

  1. スムーズなベースライン:4度進行を基本とする
  2. テンション選択:アボイドノートを避ける
  3. リズム変化:シンコペーション等で動きを
  4. 文脈重視:前後のコードとの流れを意識

楽曲分析:名曲でのツーファイブ使用例

ジャズスタンダードでの使用例

「All The Things You Are」での連続ツーファイブ

| Fm7  | B♭7  | E♭M7 | E♭M7 |
| Am7♭5| D7   | Gm   | Gm   |
| Gm7  | C7   | FM7  | FM7  |

ツーファイブの連鎖で美しい転調を実現

現代ポップスでの応用例

J-POPでの効果的な使用

Bメロ: | Am7  | Am7  | Dm7  | G7   |
サビ:   | CM7  | CM7  | FM7  | FM7  |

Bメロ最後のツーファイブがサビへの期待感を演出

まとめ:ツーファイブをマスターして音楽表現を無限に広げよう

ツーファイブ進行は、その理論的完璧さと実用性により、あらゆる音楽ジャンルで愛用される「音楽の万能薬」です。

ツーファイブマスターへのロードマップ

  • ✅ 全12キーでの基本形を完璧に演奏できる
  • ✅ 様々なテンションとアレンジを使いこなせる
  • ✅ ジャンルに応じたスタイルを使い分けられる
  • ✅ 転調やモーダルインターチェンジと組み合わせられる
  • ✅ オリジナル楽曲で効果的に活用できる

この進行をマスターすることで、あなたの音楽理論の理解と実践的な演奏技術が飛躍的に向上するでしょう。

次のステップ
ツーファイブ進行をマスターしたら、「拡張ツーファイブ」「コルトレーンチェンジ」「リハーモナイゼーション技法」など、より高度なジャズハーモニーにも挑戦してみましょう。


関連記事
アニソンコード進行25選:心を掴む進行パターンを徹底解説
DTM入門:初心者が知っておくべき基礎知識
DTMミックスでEQとダイナミクス系、どちらを先に使う?

関連記事