R&B音楽で使われる特徴的なコード進行の作り方を12の技法で解説します。テンションコード、シンコペーション、ゴスペル進行など、ソウルフルなサウンドを作るための実践的な手法を紹介します。
- R&B系コード進行が持つソウルフルな魅力
- 【1】テンション9thを活用した基本進行
- 【2】ゴスペル風IV-V-I進行
- 【3】マイナー7th中心の循環進行
- 【4】クロマチック・ハーモニー進行
- 【5】テンション13thを使った色彩豊かな進行
- 【6】ファンキーなリズム・ハーモニー
- 【7】モーダル・インターチェンジ活用進行
- 【8】ネオソウル風複雑進行
- 【9】コード・サブスティテューション技法
- 【10】ペダルポイント活用進行
- 【11】ヒップホップR&B風進行
- 【12】オルタナティブR&B風進行
- DTMでR&B系進行を効果的に制作する方法
- 楽曲構成でのR&B進行使い分け
- 実践例:本格的なR&B楽曲構成
- まとめ:R&B系コード進行でソウルフルな楽曲を
R&B系コード進行が持つソウルフルな魅力
R&B(リズム・アンド・ブルース)音楽の魅力は、豊かなハーモニーとグルーヴ感にあります。ジャズの洗練されたコード理論とブルースの感情表現が融合し、現代のネオソウルやヒップホップR&Bまで幅広く影響を与えています。
R&B系コード進行の特徴
・テンション(9th、11th、13th)の多用
・シンコペーションによるリズム感
・マイナー7thコードを基調とした響き
・ゴスペル的な和声進行
今回は、本格的なR&Bサウンドを作るための12の重要な技法を、具体的な進行例と実践的な活用法とともに詳しく解説します。
R&B音楽におけるコード進行の重要性
R&Bでコード進行が果たす役割:
- グルーヴの創出:シンコペーションとハーモニーの融合
- 感情の深化:テンションコードによる豊かな表現
- ジャンルの特色:ゴスペル、ファンク、ソウルの要素統合
- 現代的発展:ネオソウル、オルタナティブR&Bへの応用
【1】テンション9thを活用した基本進行
コード構成
Dm9 → G9 → CM9 → Am9(キー:C)
IIm9 → V9 → IM9 → VIm9
9thテンションを全てのコードに付加することで、R&B特有の洗練された響きを作り出します。
9thテンションの効果
- Dm9(深み):マイナー9thの憂いのある響き
- G9(推進力):ドミナント9thの前進感
- CM9(安定感):メジャー9thの開放的な響き
- Am9(内省的):マイナー9thの感情的深み
実践での活用法
効果的な使用場面:
・Aメロでの落ち着いた導入
・ゆったりとしたバラードR&B
・ネオソウルのメイン進行
演奏のコツ:
・ピアノでの美しいボイシング
・エレピの柔らかい音色
・ストリングスとの重ね合わせ
https://anikiblog.com/anison-chord-progressions-25-selection-2025
【2】ゴスペル風IV-V-I進行
コード構成
F/G → G7 → C → C/E → F → Dm7 → G7sus4 → G7
IV/V → V7 → I → I/III → IV → IIm7 → V7sus4 → V7
ゴスペル音楽から派生した進行で、R&Bの基盤となる重要なパターンです。
ゴスペル進行の特徴
ゴスペル的要素:
- スラッシュコード:F/Gによる浮遊感
- ベース進行:C-E-F-D-Gの滑らかな動き
- sus4の解決:G7sus4→G7の美しい解決
- 教会的響き:ゴスペルの伝統的ハーモニー
現代R&Bでの応用
- サビ前の盛り上がり:感情の高揚を演出
- アウトロでの感動的な終結:美しい余韻
- ボーカルとの相性:歌いやすく表現力を引き出す
【3】マイナー7th中心の循環進行
コード構成
Am7 → Dm7 → G7 → CM7 → F7 → Em7 → Am7
VIm7 → IIm7 → V7 → IM7 → IV7 → IIIm7 → VIm7
マイナー7thコードを中心とした循環進行で、クールで洗練されたR&Bサウンドを作ります。
マイナー7th進行の魅力
音楽的効果
・クールで都会的な響き
・ジャズ的な洗練度
・現代R&Bの基調
・ループしやすい構造
ジャンル適用
・ネオソウル
・チルアウト系R&B
・アーバンコンテンポラリー
・ローファイR&B

【4】クロマチック・ハーモニー進行
コード構成
CM7 → C#dim7 → Dm7 → D#dim7 → Em7 → A7 → Dm7 → G7
IM7 → #Idim7 → IIm7 → #IIdim7 → IIIm7 → VI7 → IIm7 → V7
半音進行を含むクロマチック・ハーモニーで、高度で洗練されたR&Bサウンドを演出します。
クロマチック進行の効果
- C#dim7(経過音):CからDmへの滑らかな接続
- D#dim7(経過音):DmからEmへの半音進行
- A7(セカンダリー):Dm7への強い解決
- 高度な響き:ジャズ理論に基づいた進行
楽曲での活用例
・Bメロでの展開的な部分
・間奏での高度なハーモニー
・上級者向けのアレンジ
・アドリブセクションの土台
【5】テンション13thを使った色彩豊かな進行
コード構成
Dm7 → G13 → CM7 → A7alt → Dm7 → G7sus4 → C6/9
IIm7 → V13 → IM7 → VI7alt → IIm7 → V7sus4 → I6/9
13thテンションとオルタードコードを組み合わせた、色彩豊かな現代R&B進行です。
高度なテンションの活用
G13の効果:
・13th(E音)による開放的な響き
・ドミナントの推進力を保持
・現代的で洗練されたサウンド
A7altの特徴:
・b9、#9、#11、b13の緊張感
・強いドミナント機能
・ジャズ的な色彩感
実践での使い方
- ネオソウル:D’AngeloやErykah Badu風
- コンテンポラリーR&B:現代的な洗練度
- フュージョン系:ジャズとR&Bの融合

【6】ファンキーなリズム・ハーモニー
コード構成
Em7 | Em7 | Am7 | Am7 | Dm7 | Dm7 | G7 | G7
(各コード2拍ずつ、シンコペーション重視)
コード進行よりもリズムパターンに重点を置いた、ファンク寄りのR&Bアプローチです。
ファンキーなリズムの作り方
シンコペーションの技法:
- オフビート強調:2拍目、4拍目のアクセント
- 16分音符:細かいリズムパターン
- ミュート奏法:ギターのパーカッシブな音
- ベースとの連携:グルーヴの統一感
楽器別アレンジ
- エレキギター:ワウペダルとカッティング
- キーボード:クラビネットやエレピ
- ベース:スラップ奏法の活用
【7】モーダル・インターチェンジ活用進行
コード構成
CM7 → Fm7 → Bb7 → CM7 → Dm7 → Gm7 → C7 → FM7
IM7 → IVm7 → bVII7 → IM7 → IIm7 → Vm7 → I7 → IVM7
モーダル・インターチェンジ(借用和音)を使用した、深みのあるR&B進行です。
借用和音の効果
Fm7の効果
・Cマイナーからの借用
・3度の音(E→Eb)の半音下降
・メランコリックな色彩
・現代R&Bの特徴的サウンド
Bb7の役割
・ミクソリディアン的響き
・ブルース感の演出
・自然な循環性
【8】ネオソウル風複雑進行
コード構成
F#m11 → B13 → EM9 → C#m7b5 → F#7alt → Bm9 → E13 → AM9
(キー:A、ネオソウル的転調含む)
ネオソウル特有の複雑で洗練されたコード進行。現代R&Bの最先端サウンドです。
ネオソウルの特徴
- F#m11(浮遊感):11thテンションの開放性
- B13(色彩感):13thの美しい響き
- C#m7b5(緊張感):ハーフディミニッシュの不安定さ
- F#7alt(解決感):オルタードの強い推進力
- イントロ:複雑なテンションコードでの雰囲気作り
- Aメロ:シンプルな進行で歌を活かす
- Bメロ:ネオソウル風複雑進行
- サビ:感情的で印象的なハーモニー

【9】コード・サブスティテューション技法
基本進行
Dm7 → G7 → CM7 → CM7
サブスティテューション後
Dm7 → Db7 → CM7 → C#dim7 → Dm7
トライトーン・サブスティテューションなどの高度な技法を使った進行です。
サブスティテューションの種類
トライトーン・サブ
- G7 → Db7への置き換え
- 同じトライトーン(B-F)
- 半音下降による滑らかさ
ディミニッシュ挿入
- CM7とDm7の間にC#dim7
- 半音進行による接続
- ジャズ的な洗練度
【10】ペダルポイント活用進行
コード構成
C/G → Am7/G → F/G → G7sus4 → C/G
(Gをペダルポイントとして維持)
ペダルポイント(持続低音)を活用した、統一感のあるR&B進行です。
ペダルポイントの効果
- 統一感:低音Gによる一貫性
- 浮遊感:上声部の和声変化
- 現代的響き:ネオソウル的なサウンド
- ドローン効果:瞑想的な雰囲気
ペダルポイント活用場面
・アンビエント系R&B
・瞑想的なセクション
・イントロ・アウトロ
・ボーカルのアドリブ背景

【11】ヒップホップR&B風進行
コード構成
Bm7 → Em7 → F#7sus4 → F#7 → Bm7 → G7 → F#7 → Bm7
(キー:Bmナチュラルマイナー基調)
現代のヒップホップR&Bで使われる、ダークで現代的な進行パターンです。
ヒップホップR&Bの特徴
現代R&Bの要素:
- マイナー調中心:ダークで都会的
- シンプルな構造:ラップとの親和性
- 808ドラムとの相性:重低音との融合
- メロディック・ラップ:歌とラップの境界線
プロダクション・アプローチ
- サンプリング活用:既存楽曲からの抽出
- ローファイ処理:ヴィンテージ感の演出
- シンセパッド:アンビエントな背景音
【12】オルタナティブR&B風進行
コード構成
Gsus2 → Am11 → Fmaj7#11 → Gsus2/D
(アンビエント・R&B風の浮遊感重視)
オルタナティブR&B(Alt-R&B)の実験的で革新的なアプローチです。
オルタナティブR&Bの革新性
革新的要素
・伝統的機能和声からの脱却
・テクスチャー重視のアプローチ
・電子音楽との融合
・実験的なサウンドデザイン
代表的アーティスト
・FKA twigs
・The Weeknd
・Frank Ocean
・Solange
DTMでR&B系進行を効果的に制作する方法
Logic ProでのR&B制作手順
Step 1: 基本設定
・BPM設定:80-120(ミディアムテンポ)
・拍子:4/4
・キー設定:Em, Am, Dm, Gmなどマイナー中心
Step 2: 音色選択
・Electric Piano:Vintage EP、Rhodes
・Organ:Hammond B3、Church Organ
・Synthesizer:Analog warmth系
Step 3: リズム・セクション
・ドラム:R&B kit、808サンプル
・ベース:Electric bass、Synth bass
・パーカッション:Tambourine、Shaker
楽器別アレンジのコツ
キーボード
- テンションコードの美しいボイシング
- Rhodes/Wurlitzer系の音色
- 微細なタイミングのずれ
ギター
- クリーントーンでのカッティング
- ワウペダルの効果的使用
- シンコペーション重視
ベース
- グルーヴ感重視のフレージング
- スラップ/フィンガー奏法
- ドラムとのタイトな連携
ドラム
- シャッフル/ハーフタイム・シャッフル
- スネアの2、4拍+シンコペ
- ハイハットの細かい刻み
楽曲構成でのR&B進行使い分け
イントロ向け進行
推奨進行
・テンション9th基本進行
・ペダルポイント活用進行
特徴
・ムードの設定
・洗練された導入
・聴き手の心を掴む響き
Aメロ向け進行
推奨進行
・マイナー7th中心の循環進行
・ゴスペル風IV-V-I進行
特徴
・歌詞を活かす落ち着いた響き
・感情を込めやすい進行
・安定感のある土台
サビ向け進行
推奨進行
・クロマチック・ハーモニー進行
・テンション13th色彩豊か進行
特徴
・感情的な高揚感
・豊かなハーモニー
・印象的なクライマックス

実践例:本格的なR&B楽曲構成
【イントロ】
ペダルポイント:C/G → Am7/G → F/G → G7sus4
【Aメロ】
9th基本進行:Dm9 → G9 → CM9 → Am9
【Bメロ】
クロマチック:CM7 → C#dim7 → Dm7 → D#dim7 → Em7
【サビ】
ゴスペル風:F/G → G7 → C → C/E → F → Dm7 → G7sus4 → G7
【ブリッジ】
ネオソウル複雑:F#m11 → B13 → EM9 → C#m7b5
【アウトロ】
モーダル・インターチェンジ:CM7 → Fm7 → Bb7 → CM7
まとめ:R&B系コード進行でソウルフルな楽曲を
R&B音楽におけるコード進行は、テクニックと感情表現が高度に融合した芸術形式です。今回紹介した12の技法を習得し、適切に組み合わせることで、本格的でソウルフルなR&Bサウンドを作ることができます。
R&B制作のポイント:
- ハーモニーの豊かさ:テンションコードによる色彩感
- グルーヴの重要性:シンコペーションとリズム感
- 感情の深化:音楽理論と感情表現の融合
- 現代的発展:伝統的R&Bから最新トレンドまで
- 楽器の特色:エレピ、オルガン、グルーヴィなリズム隊
ぜひこれらの技法を参考に、あなただけのソウルフルなR&B楽曲を作ってみてください。音楽の持つ深い感情表現力で、聴く人の心に響く素晴らしい楽曲が生まれることを願っています。