ジャズ音楽で使われる基本的なコード進行12選を詳しく解説します。ii-V-I、循環コード、代理コード、モーダルインターチェンジなど、洗練されたハーモニーを理解するための基礎知識を実例付きで紹介します。
- ジャズ風コード進行が持つ洗練された美しさ
- 【1】ii-V-I進行 – ジャズの最重要進行
- 【2】マイナーii-V-i進行
- 【3】循環コード(Circle of Fifths)
- 【4】トライトーン・サブスティテューション
- 【5】モーダルインターチェンジ進行
- 【6】ディミニッシュ・パッシング・コード
- 【7】ii-V連鎖(Chain of ii-V)
- 【8】コルトレーン・チェンジズ
- 【9】ブルース進行の洗練版
- 【10】ラテン・ジャズ進行
- 【11】現代ジャズ・ハーモニー
- 【12】ネオソウル・ジャズ融合進行
- DTMでジャズ風進行を効果的に制作する方法
- 楽曲構成でのジャズ進行使い分け
- 実践例:ジャズスタンダード構成
- まとめ:ジャズ風コード進行で洗練された音楽を
ジャズ風コード進行が持つ洗練された美しさ
ジャズ音楽の魅力は、複雑で洗練されたハーモニーにあります。7thコード、テンション、代理コード、モーダルインターチェンジなどの高度な音楽理論が織りなす豊かな和声は、聴く人に深い感動と知的な満足感を与えます。
ジャズ風コード進行の特徴
・7thコードを基調とした響き
・テンション(9th、11th、13th)の効果的使用
・代理コード(サブスティテューション)の活用
・複雑なキー関係とモーダルアプローチ
今回は、ジャズを理解するために不可欠な12の基本的なコード進行を、その音楽理論的背景と実践的な活用法とともに詳しく解説します。
ジャズ音楽におけるコード進行の重要性
ジャズでコード進行が果たす役割:
- ハーモニーの基盤:即興演奏の土台となる和声構造
- 表現の多様性:同じメロディーでも様々な解釈が可能
- 理論の実践:音楽理論の最も発達した応用分野
- 創造的発展:伝統から現代への継続的進化
【1】ii-V-I進行 – ジャズの最重要進行
コード構成
Dm7 → G7 → CM7(キー:C)
IIm7 → V7 → IM7
ii-V-I進行は、ジャズにおける最も基本的で重要な進行です。すべてのジャズミュージシャンが習得すべき必須パターンです。
ii-V-I進行の音楽理論
- Dm7(ii):サブドミナント機能、前ドミナント
- G7(V):ドミナント機能、最も強い解決欲求
- CM7(I):トニック機能、安定した解決
- 機能和声:SD→D→Tの完璧な流れ
実践での活用法
代表的な楽曲:
・Autumn Leaves
・All The Things You Are
・Fly Me To The Moon
アドリブでの活用:
・Dm7:Dドリアンスケール
・G7:Gミクソリディアンスケール
・CM7:Cアイオニアンスケール
https://anikiblog.com/anison-chord-progressions-25-selection-2025
【2】マイナーii-V-i進行
コード構成
Dm7b5 → G7alt → Cm7(キー:Cm)
IIm7b5 → V7alt → Im7
マイナーキーでのii-V-i進行。メジャーキーよりも複雑で感情的な響きを持ちます。
マイナーii-V-iの特徴
マイナーキー特有の要素:
- Dm7b5:ハーフディミニッシュコード、不安定な響き
- G7alt:オルタードスケール、強い緊張感
- Cm7:マイナー7th、深い感情表現
- ハーモニックマイナー:G7の導音効果
オルタードテンションの活用
- G7alt:b9、#9、#11、b13のテンション
- 色彩的効果:豊かな和声色彩
- 解決感の強化:Cm7への強い引力
【3】循環コード(Circle of Fifths)
コード構成
CM7 → A7 → Dm7 → G7 → Em7 → A7 → Dm7 → G7
IM7 → VI7 → IIm7 → V7 → IIIm7 → VI7 → IIm7 → V7
5度圏に基づく循環コードは、ジャズの基本的な和声進行パターンです。
循環コードの理論的背景
5度下降の原理
・C→A→D→G→E→A→D→G
・各コードのルートが5度ずつ下降
・自然で流れるような進行感
・ジャズスタンダードの基礎
楽曲での使用例
・I Got Rhythm(ガーシュウィン)
・Sweet Georgia Brown
・モダンジャズの定番構成

【4】トライトーン・サブスティテューション
基本進行
Dm7 → G7 → CM7
サブスティテューション後
Dm7 → Db7 → CM7
(G7をDb7に置き換え)
トライトーン・サブスティテューションは、ジャズハーモニーの最も重要な概念の一つです。
トライトーンサブの原理
- 共通トライトーン:G7(B-F)とDb7(F-Cb)
- 半音解決:Db7からCM7への滑らかな動き
- 色彩効果:予想外の美しい響き
- 低音の動き:G→CからDb→Cの半音下降
実践での活用例
・ビル・エヴァンスの演奏スタイル
・モダンジャズピアノの基本技法
・リハーモナイゼーションの基礎
・作編曲での洗練技法
【5】モーダルインターチェンジ進行
コード構成
CM7 → Fm7 → Bb7 → CM7
IM7 → IVm7 → bVII7 → IM7
(Cメジャーキーに対してFm7、Bb7を借用)
モーダルインターチェンジ(借用和音)を使った現代的なジャズ進行です。
借用和音の効果
Fm7の効果:
・Cナチュラルマイナーからの借用
・3度の音(E→Eb)の変化
・メランコリックな色彩
Bb7の役割:
・ミクソリディアンモードの特徴
・ブルース的な響き
・CM7への自然な回帰
現代ジャズでの応用
- ビル・エヴァンス:モーダル和声の開拓者
- チック・コリア:現代的なモーダル進行
- ブラッド・メルドー:クラシック要素との融合

【6】ディミニッシュ・パッシング・コード
コード構成
CM7 → C#dim7 → Dm7 → D#dim7 → Em7
IM7 → #Idim7 → IIm7 → #IIdim7 → IIIm7
ディミニッシュコードを経過音として使用する洗練された進行です。
ディミニッシュコードの機能
経過的ディミニッシュの特徴:
- 半音進行:滑らかな低音の動き
- 緊張と解決:不安定から安定への流れ
- 対称構造:短3度間隔の積み重ね
- 転回可能性:様々な転回形での使用
実用的な活用法
- 楽曲の装飾:シンプルな進行を豊かに
- リハーモナイゼーション:既存楽曲の再解釈
- アレンジメント:プロフェッショナルな仕上がり
【7】ii-V連鎖(Chain of ii-V)
コード構成
Em7 → A7 → Dm7 → G7 → CM7
IIIm7 → VI7 → IIm7 → V7 → IM7
(AキーのIIm7-V7→CキーのIIm7-V7-I)
複数のii-V進行を連鎖させた高度な進行パターンです。
ii-V連鎖の構造
転調の流れ
・Em7-A7:DメジャーキーのII-V
・Dm7-G7:CメジャーキーのII-V
・CM7:最終的な着地点
和声的効果
・段階的な転調感
・豊かなハーモニックリズム
・複雑でありながら論理的
・モダンジャズの代表的手法
【8】コルトレーン・チェンジズ
コード構成
CM7 → E7 → AM7 → C7 → FM7 → Ab7 → DbM7
IM7 → III7 → VIM7 → I7 → IVM7 → bVI7 → bIIM7
(Giant Stepsパターン)
ジョン・コルトレーンが開発した革新的なハーモニック・システムです。
コルトレーン・チェンジズの革新性
- 長3度関係:C-E-G#(Ab)の3つのトニック
- 対称構造:12等分された音程関係
- 高速進行:急速なキー変化
- 技術的挑戦:最高度の演奏技術要求
- Giant Steps:最も有名なコルトレーン作品
- Countdown:既存楽曲の再ハーモナイゼーション
- 26-2:Confirmation のリハーモナイゼーション
- 現代への影響:フュージョン、現代ジャズへの継承

【9】ブルース進行の洗練版
基本ブルース
C7 | C7 | C7 | C7 | F7 | F7 | C7 | C7 | G7 | F7 | C7 | G7
ジャズブルース
CM7 | E7 A7 | Dm7 G7 | Em7 A7 | Dm7 | G7 | Em7 A7 | Dm7 G7 | Em7 A7 | Dm7 G7 | CM7 A7 | Dm7 G7
基本的なブルース進行をジャズ的に洗練させた進行です。
ジャズブルースの特徴
和声の複雑化
- 7thコードの多用
- ii-V進行の挿入
- 代理コードの活用
機能の明確化
- 各コードの機能を明確に
- より論理的なハーモニー
- アドリブの指針明確化
【10】ラテン・ジャズ進行
コード構成
Am7 | D7 | GM7 | CM7 | F#m7b5 | B7 | Em7 | Em7
VIm7 | II7 | VM7 | IM7 | IVm7b5 | VII7 | IIIm7 | IIIm7
(ボサノバ・スタイル)
ラテン音楽の影響を受けたジャズ進行。特にボサノバで頻用されます。
ラテン・ジャズの特徴
- Am7スタート:マイナーセブンスの優しい響き
- D7:GM7への二次ドミナント
- GM7→CM7:5度下降の自然な流れ
- F#m7b5→B7:Em7への完全なii-V
ラテン・ジャズ楽曲例
・Girl from Ipanema
・Corcovado
・Wave
・Meditation
リズム的特徴
・ボサノバのシンコペーション
・サンバのグルーヴ
・ソフトで洗練されたフィール

【11】現代ジャズ・ハーモニー
コード構成
CM7add9 → Fsus2/C → G7sus4 → G7alt → Am11 → Dm9 → G13 → CM7
(現代的なテンションとサスペンションの活用)
現代ジャズで使用される革新的なハーモニーアプローチです。
現代ジャズハーモニーの特徴
現代的要素:
- アッパー・ストラクチャー:複雑なテンション構造
- サスペンション:sus2、sus4の効果的使用
- ポリコード:複数のコードの重ね合わせ
- 開放性:従来の機能和声からの解放
現代ジャズピアニストの影響
- キース・ジャレット:モーダルアプローチ
- ブラッド・メルドー:クラシック要素の導入
- ロバート・グラスパー:ヒップホップとの融合
【12】ネオソウル・ジャズ融合進行
コード構成
Em11 → A13 → DM9 → GM7#11 → C#m7b5 → F#7alt → Bm9
(ネオソウルとジャズの融合スタイル)
ネオソウルの影響を受けた現代的なジャズ進行です。
ネオソウル・ジャズの革新性
融合的特徴
・ジャズハーモニーの複雑さ
・ネオソウルのグルーヴ感
・現代的な音響処理
・ヒップホップ要素の導入
代表的アーティスト
・ロバート・グラスパー
・テラス・マーティン
・カマシ・ワシントン
・エスペランサ・スポルディング
DTMでジャズ風進行を効果的に制作する方法
Logic Proでのジャズ制作手順
Step 1: 基本設定
・BPM設定:120-140(ミディアム・スウィング)
・拍子:4/4
・キー設定:Bb, Eb, F, C(管楽器向き)
Step 2: 音色選択
・ピアノ:Vintage EP、Acoustic Piano
・ベース:Upright Bass、Electric Bass
・ドラム:Jazz kit、Brush kit
Step 3: スウィング設定
・Logic:Swing 16th設定
・ベロシティ:自然なダイナミクス
・タイミング:微細なずれの演出
楽器別ジャズアレンジのコツ
ピアノ
- 左手:ルートと7thの交互演奏
- 右手:テンションを含むボイシング
- コンピング:リズミカルな和音演奏
ベース
- ウォーキングベースライン
- 4分音符の安定したビート
- コード変化に合わせたライン構築
ドラム
- スウィングリズムの基本パターン
- ブラシ奏法での繊細な表現
- フィルインでの楽曲構成サポート
管楽器
- サックス:温かいトーン
- トランペット:ミュートの活用
- トロンボーン:低音域での厚み
楽曲構成でのジャズ進行使い分け
テーマ(メロディー)向け進行
推奨進行
・ii-V-I進行
・循環コード
特徴
・メロディーを活かす安定した土台
・聴きやすく親しみやすい
・ジャズスタンダードの基本構造
アドリブセクション向け進行
推奨進行
・ii-V連鎖
・トライトーン・サブスティテューション
特徴
・演奏者の技術を引き出す
・創造性を刺激する複雑さ
・ハーモニックな挑戦
現代的アレンジ向け進行
推奨進行
・モーダルインターチェンジ
・現代ジャズハーモニー
特徴
・新鮮で現代的な響き
・様々なジャンルとの融合可能性
・クリエイティブな表現力

実践例:ジャズスタンダード構成
【A1】(8小節)
基本ii-V-I:Dm7 → G7 → CM7 → CM7
【A2】(8小節)
循環進行:Em7 → A7 → Dm7 → G7
【B】(8小節・ブリッジ)
転調ii-V:Em7 → A7 → Dm7 → G7
サブスティテューション:Em7 → Eb7 → Dm7 → Db7
【A3】(8小節)
回帰と終止:Dm7 → G7 → CM7 → A7
クロージング:Dm7 → G7 → CM7
まとめ:ジャズ風コード進行で洗練された音楽を
ジャズ音楽におけるコード進行は、音楽理論の最も発達した芸術形式です。今回紹介した12の基本進行を理解し、段階的に習得することで、洗練されたハーモニー感覚と創造的な表現力を身につけることができます。
ジャズ学習のポイント:
- 理論の理解:コード機能と和声進行の論理
- 実践の積み重ね:楽器での実際の演奏体験
- 聴音の訓練:優れたジャズ録音の分析的リスニング
- 創造的応用:学んだ理論の自由な活用
- 継続的学習:ジャズは生涯をかけて学ぶ芸術
ぜひこれらのコード進行を参考に、あなただけの洗練されたジャズサウンドを追求してみてください。音楽理論と感性が融合した時、真に美しいハーモニーが生まれることでしょう。