ボサノバ音楽で使われる美しいコード進行10選を詳しく解説します。特徴的なテンションコード、ギターでのボイシング、ピアノでのアレンジ方法、そしてボサノバ特有のリズム感の作り方まで実践的に紹介します。
- ボサノバコード進行が持つ上品で洗練された美しさ
- 【1】「イパネマの娘」進行 – ボサノバの代表的進行
- 【2】「ウェーブ」風進行 – 半音進行の美学
- 【3】「Corcovado」進行 – 美しいマイナー進行
- 【4】「Desafinado」風モーダル進行
- 【5】「Água de Beber」風循環進行
- 【6】「Meditation」風瞑想的進行
- 【7】「So Nice」風アップテンポ進行
- 【8】「Blue Bossa」風ブルース・ボサノバ
- 【9】「Triste」風メランコリー進行
- 【10】「Dindi」風ロマンティック進行
- DTMでボサノバ風進行を効果的に制作する方法
- 楽曲構成でのボサノバ進行使い分け
- 実践例:本格ボサノバ楽曲構成
- まとめ:ボサノバコード進行で上品な音楽を
ボサノバコード進行が持つ上品で洗練された美しさ
ボサノバ(Bossa Nova)の魅力は、洗練されたハーモニーと上品なリズム感にあります。1950年代後半にブラジルで生まれたこの音楽スタイルは、ジャズの複雑なハーモニーとブラジル音楽の温かさを融合させ、世界中で愛される音楽ジャンルとなりました。
ボサノバコード進行の特徴
・テンション(7th、9th、11th、13th)の美しい響き
・半音進行による滑らかなベースライン
・ギターでの特徴的なボイシング
・ジャズ理論に基づいた洗練されたハーモニー
今回は、ボサノバの代表的な楽曲で使用される10の美しいコード進行を、ギターとピアノでの演奏法、音楽理論的な解説とともに詳しく紹介します。
ボサノバ音楽におけるコード進行の重要性
ボサノバでコード進行が果たす役割:
- 洗練された響き:ジャズ理論に基づく複雑で美しいハーモニー
- リラックス効果:穏やかで心地よい音楽的雰囲気
- 文化的融合:ブラジル音楽とジャズの見事な結合
- 楽器との調和:ギター、ピアノ、歌声の完璧なバランス
【1】「イパネマの娘」進行 – ボサノバの代表的進行
コード構成
FM7 → G7 → Em7 → Am7 → Dm7 → G7 → CM7
IVM7 → V7 → IIIm7 → VIm7 → IIm7 → V7 → IM7
(キー:C)
「The Girl from Ipanema」で使用される、ボサノバの最も代表的な進行です。
「イパネマの娘」進行の魅力
- FM7(開始):サブドミナントの美しい響き
- G7(推進):ドミナント機能、前進感
- Em7→Am7:平行進行による滑らかな流れ
- Dm7→G7→CM7:完璧なii-V-I解決
ギターでのボイシング
フレット位置(例):
・FM7:1×3210(1フレット・セーハ)
・G7:320001
・Em7:022030
・Am7:x02010
演奏テクニック:
・親指で6弦、4本指でその他を担当
・軽いタッチで柔らかい音色を作る
・ミュート技法で余韻をコントロール
https://anikiblog.com/anison-chord-progressions-25-selection-2025
【2】「ウェーブ」風進行 – 半音進行の美学
コード構成
DM7 → D7 → GM7 → Gm7 → C7 → FM7 → Fm7 → Bb7 → Em7b5 → A7 → Dm7
(半音下降によるクロマチック・ハーモニー)
Antonio Carlos Jobimの「Wave」に見られる、半音進行を多用した洗練された進行です。
半音進行の音楽的効果
クロマチック・ハーモニーの特徴:
- DM7→D7:メジャー7thからドミナント7thへの色彩変化
- GM7→Gm7:長調から短調への陰影
- FM7→Fm7:モーダルインターチェンジの活用
- 半音ベースライン:D-D-G-G-C-F-F-Bb-E-A-D
演奏での注意点
- テンポ:ゆったりとしたミディアム・ボサノバ
- タッチ:各コードの色彩変化を明確に
- ベースライン:半音進行を意識した低音
【3】「Corcovado」進行 – 美しいマイナー進行
コード構成
Am7 → D7 → GM7 → CM7 → F#m7b5 → B7 → Em7 → Em7
VIm7 → II7 → VM7 → IM7 → #IVm7b5 → VII7 → IIIm7 → IIIm7
(キー:C)
「Quiet Nights of Quiet Stars」の美しいマイナー系進行です。
マイナー系ボサノバの特徴
和声的特徴
・Am7からスタートする落ち着いた響き
・D7→GM7の明るい解決
・F#m7b5→B7→Em7の完璧なii-V-i
・Em7での美しい終止感
演奏スタイル
・よりイントロスペクティブな表現
・繊細なダイナミクス
・歌詞の内容に合わせた情感
・夜の雰囲気を演出する音色選択

【4】「Desafinado」風モーダル進行
コード構成
FM7 → Em7b5 → A7 → Dm7 → G7 → Em7 → Eb7 → Dm7 → G7
IVM7 → IIIm7b5 → VI7 → IIm7 → V7 → IIIm7 → bIII7 → IIm7 → V7
(キー:C)
モーダルインターチェンジを効果的に使用した進行パターンです。
モーダルインターチェンジの活用
- Em7b5:Dm7への導入として機能
- A7:Dm7に対するセカンダリードミナント
- Eb7:トライトーン・サブスティテューション
- 色彩効果:予想外の美しい和声変化
楽曲での活用例
・Aセクションでの展開的な部分
・ボーカルの装飾的なフレーズとの組み合わせ
・インストゥルメンタル・ソロのバッキング
・リハーモナイゼーションのアイデア源
【5】「Água de Beber」風循環進行
コード構成
CM7 → A7 → Dm7 → G7 → Em7 → Am7 → Dm7 → G7
IM7 → VI7 → IIm7 → V7 → IIIm7 → VIm7 → IIm7 → V7
(キー:C)
循環コードをベースにしたボサノバ的アプローチです。
ボサノバ循環進行の特徴
基本循環との違い:
・7thコードによる洗練された響き
・ボサノバ特有のリズムパターン
・ギター奏法との高い親和性
リズム的特徴:
・シンコペーションの効果的使用
・軽やかでありながら安定感
・ダンサブルでありながら上品
アレンジのポイント
- ギター:ナイロン弦の温かい音色
- ピアノ:スタッカート気味のタッチ
- ベース:ウォーキングベースライン

【6】「Meditation」風瞑想的進行
コード構成
CM7 → Bm7b5 → E7 → Am7 → Abm7 → Db7 → GM7 → G7
IM7 → VIIm7b5 → V7/VI → VIm7 → bVIm7 → bII7 → VM7 → V7
(キー:C)
瞑想的で深い精神性を表現する進行パターンです。
瞑想的ハーモニーの作り方
スピリチュアルな響きの要素:
- Bm7b5→E7→Am7:マイナーキーへの美しい解決
- Abm7→Db7:遠隔調からの借用コード
- GM7:開放的で瞑想的な響き
- G7:次のセクションへの自然な流れ
演奏での表現方法
- テンポ:非常にゆったりとしたバラード調
- ダイナミクス:静謐で内省的な音量
- フレージング:歌うような旋律的な演奏
【7】「So Nice」風アップテンポ進行
コード構成
Dm7 → G7 → Em7 → A7 → Dm7 → G7 → CM7 → CM7
IIm7 → V7 → IIIm7 → VI7 → IIm7 → V7 → IM7 → IM7
(キー:C)
軽やかでスウィンギーなボサノバ進行です。
アップテンポ・ボサノバの特徴
リズム的要素
・より明確なシンコペーション
・軽快なテンポ感(♩=140-160)
・ダンサブルなグルーヴ
・楽器間の掛け合い
ハーモニー的特徴
・ii-V-Iの基本形を軸とした進行
・Em7→A7による色彩的変化
・安定感のあるCM7への解決
・繰り返しやすい8小節構造
【8】「Blue Bossa」風ブルース・ボサノバ
コード構成
Cm7 → Fm7 → Dm7b5 → G7 → Cm7 → Ebm7 → Ab7 → DbM7
Im7 → IVm7 → IIm7b5 → V7 → Im7 → bIIIm7 → bVI7 → bIIM7
(キー:Cm)
ブルースとボサノバを融合させた独特な進行です。
ブルース・ボサノバの革新性
- Cm7スタート:マイナーブルースの基調
- Fm7:サブドミナント・マイナーの深み
- Ebm7→Ab7→DbM7:遠隔調への転調
- 文化的融合:アフロ・アメリカンとブラジル音楽
- Aセクション:マイナーブルース基調
- Bセクション:転調による色彩変化
- 戻り:元調への自然な回帰
- アウトロ:フェードアウトまたは決定的な終止

【9】「Triste」風メランコリー進行
コード構成
AM7 → F#m7 → Bm7 → E7 → C#m7 → F#7 → BM7 → G#m7 → C#7 → F#m7
(キー:A、感情的で複雑な転調を含む)
深い悲しみと美しさを表現するメランコリックな進行です。
メランコリーなハーモニーの作り方
前半部分
- AM7→F#m7:長調から短調への転換
- Bm7→E7:ii-Vによる推進力
- C#m7:相対短調の導入
後半部分
- F#7→BM7:転調による明るさ
- G#m7→C#7:新しいキーでのii-V
- F#m7:元の悲しみへの回帰
【10】「Dindi」風ロマンティック進行
コード構成
GM7 → E7 → Am7 → D7 → Bm7 → Em7 → Am7 → D7 → GM7
IM7 → VI7 → IIm7 → V7 → IIIm7 → VIm7 → IIm7 → V7 → IM7
(キー:G)
ロマンティックで夢見るような美しい進行です。
ロマンティック・ボサノバの特徴
ロマンティックな要素:
- GM7の開放感:愛の喜びを表現
- E7→Am7:甘美な色彩変化
- 円環構造:永遠の愛を象徴する循環
- 自然な歌いやすさ:ボーカルとの完璧な融合
ロマンティック・アレンジのコツ
- テンポ:ゆったりとした愛の歌調
- 音色:温かく包み込むような響き
- リズム:優しく揺れるようなフィール

DTMでボサノバ風進行を効果的に制作する方法
Logic Proでのボサノバ制作手順
Step 1: 基本設定
・BPM設定:120-140(ミディアム・ボサノバ)
・拍子:4/4
・キー設定:C, G, F, Amなど演奏しやすいキー
Step 2: 音色選択
・ギター:Classical Guitar、Nylon String
・ピアノ:Vintage EP、Grand Piano
・ベース:Upright Bass、Electric Bass
Step 3: リズム設定
・ドラム:Brush kit、Latin kit
・パーカッション:Shaker、Tambourine
・微細なタイミング調整でスウィング感を演出
楽器別ボサノバアレンジのコツ
ナイロンギター
- 指弾きによる温かい音色
- テンションコードの美しいボイシング
- 右手のリズムパターン習得
ピアノ
- 左手:シンプルなベースライン
- 右手:洗練されたコードボイシング
- 軽やかなタッチとペダリング
ベース
- ウォーキングベースの基本
- コード進行に沿ったライン構築
- ブラジリアン・グルーヴの習得
ドラム/パーカッション
- ブラシ奏法による繊細な表現
- サンバ由来のリズムパターン
- シェイカーによるグルーヴ補強
楽曲構成でのボサノバ進行使い分け
イントロ向け進行
推奨進行
・「Água de Beber」風循環進行
・「So Nice」風アップテンポ進行
特徴
・聴き手を楽曲世界に誘う
・ボサノバの雰囲気を即座に演出
・楽器の音色を活かす空間
Aメロ向け進行
推奨進行
・「イパネマの娘」進行
・「Corcovado」進行
特徴
・歌詞と音楽の美しい融合
・ボーカルを活かす落ち着いた進行
・ブラジル語の響きとの調和
サビ向け進行
推奨進行
・「ウェーブ」風半音進行
・「Dindi」風ロマンティック進行
特徴
・感情的なクライマックス
・洗練されたハーモニー
・記憶に残る美しい響き

実践例:本格ボサノバ楽曲構成
【イントロ】(8小節)
循環進行:CM7 → A7 → Dm7 → G7
【Aメロ】(16小節)
イパネマ風:FM7 → G7 → Em7 → Am7 → Dm7 → G7 → CM7
【Bメロ】(8小節)
転調進行:Am7 → D7 → GM7 → GM7
【サビ】(16小節)
ロマンティック:GM7 → E7 → Am7 → D7 → Bm7 → Em7 → Am7 → D7 → GM7
【インストゥルメンタル】(32小節)
ウェーブ風半音進行でギター・ソロ
【アウトロ】(8小節)
瞑想的:CM7 → Bm7b5 → E7 → Am7 → Dm7 → G7 → CM7
まとめ:ボサノバコード進行で上品な音楽を
ボサノバ音楽におけるコード進行は、洗練されたジャズ理論とブラジルの温かい音楽性が見事に融合した芸術形式です。今回紹介した10の美しい進行を理解し、実際に演奏することで、ボサノバ特有の上品で心地よいサウンドを習得することができます。
ボサノバ学習のポイント:
- ハーモニーの理解:ジャズ理論に基づく複雑な和声進行
- リズム感の習得:ブラジリアン・グルーヴの微妙なニュアンス
- 楽器特性の活用:ギター、ピアノそれぞれの美しい響き
- 文化的背景の理解:ブラジル音楽の歴史と精神性
- 感情表現の深化:洗練された大人の音楽的表現力
ぜひこれらのコード進行を参考に、あなただけの美しいボサノバサウンドを追求してみてください。音楽の持つ癒しの力と洗練された美しさで、聴く人の心に深い感動を与える素晴らしい楽曲が生まれることでしょう。