セカンダリードミナント(副属和音)の基本理論から実践的な活用方法まで詳しく解説します。V/V、V/vi、V/iiなどの効果的な使い方、アニソンでの使用例、DTMでの実装方法も紹介しています。
セカンダリードミナントとは?楽曲に推進力を与える副属和音
セカンダリードミナント(Secondary Dominant)とは、ダイアトニック以外のドミナントセブンスコードで、特定のコードに対してV7として機能する和音のことです。「副属和音」とも呼ばれます。
基本的な仕組み
Cメジャーキー:C Dm Em F G Am Bdim
V/V(ファイブ・オブ・ファイブ):D7 → G
D7はGに対するドミナントとして機能
この技法により、強い推進力と一時的な転調感を楽曲に加えることができます。
なぜセカンダリードミナントが効果的なのか?
セカンダリードミナントの効果:
- 推進力の向上:強い解決欲求を生み出す
- 緊張感の演出:一時的な不安定感を作る
- 色彩感の追加:ダイアトニック以外の音を使用
- 楽曲の変化:単調な進行に刺激を与える
主要なセカンダリードミナントの種類
1. V/V(ファイブ・オブ・ファイブ)
最も頻繁に使用されるセカンダリードミナントです。
Cメジャーキーの例
C → D7 → G → C
(D7がGに対するドミナント)
特徴:
- 非常に強い推進力
- ロック、ポップス、ジャズで頻用
- サビ前やブリッジで効果的
2. V/vi(ファイブ・オブ・シックス・マイナー)
関係調への一時的な転調感を作ります。
Cメジャーキーの例
C → E7 → Am → F → G → C
(E7がAmに対するドミナント)
特徴:
- 劇的な色彩変化
- アニソン、J-POPで人気
- 感情的な表現に適している
3. V/ii(ファイブ・オブ・ツー・マイナー)
2度のマイナーコードを強調します。
Cメジャーキーの例
C → A7 → Dm → G → C
(A7がDmに対するドミナント)
特徴:
- 中間的な緊張感
- ジャズやボサノバで多用
- 洗練された響き
4. V/IV(ファイブ・オブ・フォー)
4度のメジャーコードを強調します。
Cメジャーキーの例
C → C7 → F → G → C
(C7がFに対するドミナント)
特徴:
- ブルース的な響き
- カントリー、ロックで使用
- 親しみやすい感覚
https://anikiblog.com/anison-chord-progressions-25-selection-2025
ジャンル別セカンダリードミナント活用法
アニソン・J-POP
サビ前の盛り上がり:
F → G → E7 → Am → D7 → G → C
感情的なBメロ:
Am → A7 → Dm → G → E7 → Am
これらのパターンは、アニソンの感情表現において非常に効果的です。
ロック・ポップス
パワフルなサビの例
C → F → D7 → G → C
(V/Vで強い推進力を演出)
ドライブ感のあるブリッジ
Am → E7 → Am → F → C → G → C
ジャズ・ボサノバ
洗練された進行の例
CM7 → A7 → Dm7 → G7 → Em7 → A7 → Dm7 → G7
複数のセカンダリードミナントを組み合わせて、複雑で美しい進行を作ります。

DTMでの実践的な活用方法
Logic Proでの実装手順
Step 1: 基本進行を作成
– まずはダイアトニックコードで基本的な進行を作る
– 4-8小節程度の循環進行
Step 2: 解決先を特定
– どのコードを強調したいかを決める
– そのコードに対するV7を特定
Step 3: 段階的に挿入
– 一つずつセカンダリードミナントを挿入
– 前後の流れを確認しながら調整
効果的な使用テクニック
実践的なアプローチ:
- 短時間の使用:1-2小節程度で素早く解決
- メロディーとの調和:歌メロに含まれる音を考慮
- リズムの強調:強拍でセカンダリードミナントを配置
- ベースラインの工夫:半音階的な動きを活用
楽器別アレンジのコツ
ピアノ・キーボード
- 左手でベースライン強化
- 右手でテンションを追加
- アルペジオで響きを活かす
ギター
- バレーコードで押さえる
- ストロークで推進力を演出
- 単音弾きで内声を強調
ホーン・ブラス
- セカンダリードミナントを強調
- ユニゾンで迫力を追加
- ハーモニーで厚みを演出
ベース
- 根音を確実に演奏
- 半音階的なラインを活用
- リズムで推進力をサポート

よく使われるセカンダリードミナント進行
1. vi – V/V – V – I
Cメジャーの例
Am → D7 → G → C
クラシックな循環進行
2. I – V/vi – vi – V/V – V
Cメジャーの例
C → E7 → Am → D7 → G
連続するセカンダリードミナント
3. ii – V/ii – ii – V – I
Cメジャーの例
Dm → A7 → Dm → G7 → C
ジャズ的な洗練された進行
4. I – V/IV – IV – V – I
Cメジャーの例
C → C7 → F → G → C
ブルース・カントリー的な進行

上級テクニック:セカンダリードミナントの発展
1. 連続するセカンダリードミナント
例:Circle of Fifths
C → A7 → D7 → G7 → C
5度圏に沿った連続進行
2. 代理和音との組み合わせ
例:トライトーン代理
C → Ab7 → G → C
D7の代わりにAb7(裏コード)を使用
3. マイナーキーでのセカンダリードミナント
例:Aマイナーキー
Am → B7 → Em → Am
V/vとしてB7を使用
注意点とよくある間違い
避けるべきポイント
注意事項:
- 解決の欠如:セカンダリードミナントは必ず解決させる
- 過度の使用:多用すると効果が薄れる
- メロディーとの衝突:歌メロとの音程関係に注意
- 不自然な配置:楽曲の流れを考慮する
効果的な使用タイミング
- サビ前:緊張感を高めて盛り上がりを演出
- ブリッジ:楽曲に変化を与える
- 転調の準備:次のキーへの橋渡し
- 終止部分:最終的な解決感を強調
実際の楽曲での使用例
クラシック音楽
バッハやモーツァルトの作品には多くのセカンダリードミナントが使われています。特に「インヴェンション」や「ソナタ」では、調性の変化を効果的に演出するために頻繁に使用されています。
ジャズスタンダード
- 「Autumn Leaves」:ii-V-Iの進行に多数のセカンダリードミナント
- 「All The Things You Are」:転調とセカンダリードミナントの組み合わせ
- 「Giant Steps」:極端に多いセカンダリードミナント

練習問題:実際に作ってみよう
初級編:基本のV/V
C → F → D7 → G → C
中級編:複数のセカンダリードミナント
C → E7 → Am → A7 → Dm → G7 → C
上級編:連続するセカンダリードミナント
C → A7 → D7 → G7 → Em7 → A7 → Dm7 → G7 → C
まとめ:セカンダリードミナントで楽曲に推進力を
セカンダリードミナントは、楽曲に強い推進力と緊張感を与える非常に効果的な技法です。適切に使用することで、聴く人を引き込む魅力的な音楽を作ることができます。
今回学んだポイント:
- 主要なセカンダリードミナント(V/V、V/vi、V/ii、V/IV)の特徴
- ジャンル別の効果的な使用方法
- DTMでの実践的な実装方法
- 効果的な使用タイミング
ぜひあなたの楽曲制作にもセカンダリードミナントを取り入れて、より推進力のある魅力的な音楽表現を目指してください!
