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ボカロP作曲家のコード進行傾向:デジタル音楽革命の和声分析【音楽理論・作曲技法】

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ボーカロイド(ボカロ)文化は、従来の音楽業界とは異なる独自の創作環境から、革新的な音楽表現を生み出してきました。今回は、代表的なボカロP(プロデューサー)たちのコード進行の特徴を分析し、デジタル音楽時代の新しい和声語法を詳しく解説します。

ボカロP音楽の特殊性とは?

ボカロP音楽に見られる特徴

  • 実験性:既存の音楽理論に囚われない自由な発想
  • デジタル音源活用:シンセサイザーによる多彩な音色
  • 個性重視:独自の音楽的アイデンティティ追求
  • ジャンル横断:様々な音楽スタイルの融合

これらの特徴により、ボカロP たちは従来のポップスとは一線を画した独自のコード進行センスを発達させています。

ハチ(米津玄師):ポップセンスと実験性の融合

独特なメロディハーモニー感覚

ハチの和声的特徴

キャッチーでありながら予想を裏切る和声進行

  • 非機能和声:伝統的機能に依存しない進行
  • chromaticアプローチ:半音階的な和声移動
  • モーダル要素:ドリアン、ミクソリディアンの使用
  • テンション活用:add9、sus2の効果的配置

代表的な技法例

  • 「マトリョシカ」:Am – F – C – G を基調とした展開
  • 「砂の惑星」:Bm – G – D – A(vi – IV – I – V in D)
  • 特徴:シンプルながら印象的な和声選択

楽曲分析:「千本桜」

分析ポイント

ボカロ界を代表する楽曲の和声構造

コード進行の特徴

  1. Aメロ:Em – C – G – D(vi – IV – I – V in G)
  2. Bメロ:Am – Em – F – C(ii – vi – VII – IV)
  3. サビ:C – G – Am – Em(I – V – vi – iii)
  4. 特徴:和風スケールとポップス進行の融合

wowaka:激情的ロックサウンド

パワフルな和声とリズムの融合

wowakaの音楽的特徴

ロックバンド的アプローチとデジタル音楽の融合

特徴的な技法

  • パワーコード進行:5度音程中心の力強い響き
  • 転調の多用:劇的な展開のための調性変化
  • 変拍子:7/8、5/4拍子の効果的使用
  • ディストーション:歪んだ音色による攻撃的サウンド

代表楽曲での使用例

  • 「裏表ラバーズ」:E5 – B5 – C#5 – A5(I – V – vi – IV in E)
  • 「ローリンガール」:複雑な転調とリズム変化
  • 特色:感情的な激しさを音楽で表現

DECO*27:洗練されたポップセンス

商業音楽的完成度

DECO*27の音楽的特徴

  • J-POP的なキャッチーなメロディ
  • 洗練された和声進行
  • 現代的なサウンドプロダクション
  • 幅広いリスナーへの訴求力

特徴的なコード進行パターン

  1. 王道進行:F – G – Em – Am(IV – V – iii – vi)
  2. カノン進行:C – G – Am – Em – F – C – F – G
  3. 小室進行:Am – F – C – G(vi – IV – I – V)
  4. セブンスコード:Am7、Cmaj7の多用

「愛言葉」での技法分析

ポップスとしての完成度

商業的成功と芸術性を両立した代表作

楽曲構成とコード進行

  • イントロ:C – Am – F – G(I – vi – IV – V)
  • Aメロ:Am – F – C – G(vi – IV – I – V)
  • サビ:F – G – Em – Am(IV – V – iii – vi)王道進行
  • 特徴:親しみやすさと洗練の両立

sasakure.UK:実験的電子音楽

アブストラクトな音響実験

重要な特徴

従来の音楽概念を超越した先進的アプローチ

sasakure.UKの和声的特徴

  • 非調性要素:12音技法の部分的応用
  • 複雑なリズム:変拍子とポリリズムの組み合わせ
  • 音響効果:エフェクト処理による音色変化
  • コラージュ技法:異なる音楽要素の組み合わせ

代表的なコード進行例

  • 「*ハロー、プラネット。」:複雑な和声構造
  • 「蜘蛛糸モノポリー」:実験的な音響構成
  • 特徴:概念的で芸術性重視の楽曲構造

ryo(supercell):エモーショナルなメロディメーカー

感情に訴える叙情的和声

ryoの作曲アプローチ

  • メロディ重視の楽曲構成
  • 感情的な起伏を重視した和声選択
  • バンドサウンド的なアレンジ
  • 映像的な音楽表現

使用頻度の高いコード進行

  1. 転調多用:半音上、長3度上転調
  2. サブドミナントマイナー:ivコードによる切ない響き
  3. sus4解決:Gsus4 – G による美しい解決
  4. ペダルポイント:持続低音による効果

40mP:キュートポップの巨匠

可愛らしさを追求した音楽性

40mPの特徴的スタイル

「可愛い」を音楽で表現する独特なセンス

特徴的な和声技法

  • メジャー系進行:明るく親しみやすい響き
  • 高音域メロディ:可愛らしさを演出する音域設定
  • シンプル構成:分かりやすい楽曲構造
  • ポップなリズム:軽快で親しみやすいビート

Mitchie M:ファンクグルーヴの職人

グルーヴ重視のコード設計

Mitchie Mの特徴的パターン

  • ファンク進行:Dm7 – G7 – Cmaj7 – Am7
  • ジャズ的和音:7th、9thコードの多用
  • シンコペーション:複雑なリズムパターン
  • ベースライン:グルーヴの基盤となるベース

ボカロP世代別音楽傾向

第1世代(2007-2010):実験と模索の時代

初期ボカロPの特徴

新しい表現媒体への挑戦と実験性

第1世代の特徴

  • 実験性重視:従来の音楽理論からの脱却
  • DIY精神:個人制作による自由な発想
  • 技術的制約:初期ボカロの音声品質による制限
  • ジャンル多様性:様々な音楽スタイルの試行

第2世代(2011-2015):商業化と洗練

第2世代の特徴

  • 商業的成功:メジャーレーベルとの連携
  • 技術向上:ボカロ音質の改善
  • 楽曲完成度:プロダクション品質の向上
  • キャラクター重視:ミク、リン、レンなどの個性活用

現代ボカロP(2016-現在):多様性と成熟

新世代の音楽的特徴

現代ボカロPの傾向

技術的成熟と表現の多様化

現代的な特徴

  • ハイブリッド化:人声とボカロの融合
  • 国際化:海外トレンドの積極的取り入れ
  • 高品質化:プロレベルの制作環境
  • 個性の確立:独自の音楽的アイデンティティ

ボカロP別コード進行比較表

各ボカロPの代表的パターン

ボカロP特徴的進行音楽的特色ジャンル
ハチvi-IV-I-Vポップ・実験的オルタナティブ
wowakaパワーコード中心激情的・ロックロック
DECO*27IV-V-iii-vi洗練・商業的ポップス
sasakure.UK実験的和声前衛・電子エレクトロニカ
ryo転調多用感情的・叙情ロック/ポップ
40mPメジャー系明快可愛い・キュートポップス

ボカロP音楽の技術的革新

DAW技術の活用

デジタル制作の利点

  • 無限の音色:ソフトシンセによる多彩な表現
  • 精密な編集:MIDI による詳細なコントロール
  • エフェクト活用:リバーブ、ディレイ等の空間演出
  • レイヤー重ね:多重録音による厚みのあるサウンド

ボカロ特有の表現技法

技術的ポイント

ボーカロイドならではの音楽表現

ボカロ活用技法

  1. ピッチベンド:人間では不可能な音程変化
  2. 超高速歌唱:機械ならではの演奏技術
  3. 多重コーラス:同じ声質での重厚なハーモニー
  4. 音程精度:完璧な音程での歌唱

ボカロPから学ぶ現代作曲技法

各ボカロPから学べるポイント

実践的な学習アプローチ

  1. ハチ:既存理論にとらわれない発想力
  2. wowaka:感情表現のための大胆な転調
  3. DECO*27:商業的完成度と芸術性の両立
  4. sasakure.UK:実験的アプローチの価値
  5. ryo:メロディとハーモニーの関係性

デジタル音楽制作での応用

制作手順

  1. コンセプト設定:楽曲の方向性とキャラクター設定
  2. DAW選択:制作環境の整備
  3. 音色選択:ソフトシンセとサンプルの活用
  4. 和声設計:独自のコード進行パターン開発
  5. ミックス・マスタリング:最終的な音質調整

まとめ:ボカロPが切り開いた新しい音楽

ボカロP たちは、デジタル音楽制作技術と自由な発想力を組み合わせて、従来の音楽業界では生まれ得なかった革新的な音楽表現を創造してきました。彼らの多様なコード進行アプローチは、現代の音楽制作者にとって貴重な学習資源となっています。

学習のポイント

  • 既存の音楽理論にとらわれない自由な発想
  • デジタル技術を活用した表現方法の探求
  • 個性的な音楽アイデンティティの確立
  • 実験性と商業性のバランス
  • 継続的な技術向上と創造性の追求

ボカロP たちの革新的な技法から学び、新しい時代のデジタル音楽創造に活かしていきましょう。彼らが築いた音楽的遺産は、これからの音楽制作者にとって無限のインスピレーションの源となるでしょう。

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