ジャズやフュージョン、プログレッシブロックで頻繁に使われるドリアンモード。その独特な響きを最大限に活かすために、今回は「ドリアンモードで使える3つのペンタトニックスケール」を徹底解説します。
ドリアンモードとは?基本をおさらい
ドリアンモードは、教会旋法(チャーチモード)の第2モードで、メジャースケールの2番目の音から始まる音階です。
🎵 ドリアンモードの特徴
- 音程構成:1 – 2 – ♭3 – 4 – 5 – 6 – ♭7
- 特性音:6度(ナチュラル6度)がポイント
- 響きの特徴:マイナーでありながら明るさを持つ中間的な響き
- 使用場面:ジャズのIIm7コード、モーダルジャズ、フュージョン
Dドリアンスケールの例
D – E – F – G – A – B – C – D
※ Cメジャースケールと同じ音ですが、Dから始まることで全く違う響きになります。
なぜペンタトニックスケールを使うのか?
ドリアンモードは7音から成りますが、ペンタトニックスケール(5音音階)を使うことで以下のメリットがあります:
ポイント:ペンタトニックは音数が少ないため、メロディラインが明確になり、即興演奏でも扱いやすい。また、複雑なコード進行でも外れにくいという利点があります。
ドリアンモードで使える3つのペンタトニックスケール
ここからが本題です。Aドリアンモード(A-B-C-D-E-F#-G)を例に、使える3つのペンタトニックスケールを紹介します。
1. ルート音のマイナーペンタトニック(Aマイナーペンタ)
🎹 構成音
A – C – D – E – G
度数:1 – ♭3 – 4 – 5 – ♭7
特徴と使い方
- 最も基本的で安定した響き
- ブルースやロックでも使い慣れた音使い
- ドリアンの特性音(6度)は含まれない
- 安全に演奏したい時の第一選択
💡 実践的な使い方
Am7コード上でのソロの導入部分や、フレーズの締めくくりに使用。聴き手に安心感を与えたい時に効果的です。
2. 2度上のマイナーペンタトニック(Bマイナーペンタ)
🎹 構成音
B – D – E – F# – A
度数(Aから見て):2 – 4 – 5 – 6 – 1
特徴と使い方
最重要ポイント:F#(6度)を含むため、ドリアンモードの特性を最も表現できるペンタトニックです!
- ドリアンらしさを最も表現できる
- ジャズやフュージョンで頻繁に使用
- 都会的で洗練された響き
- マイナーでありながら明るさを演出
🎸 プロの技
Pat MethenyやJohn Scofieldなど、多くのジャズギタリストがこの手法を愛用。特にAm7-D7進行で威力を発揮します。
3. 5度上のマイナーペンタトニック(Eマイナーペンタ)
🎹 構成音
E – G – A – B – D
度数(Aから見て):5 – ♭7 – 1 – 2 – 4
特徴と使い方
- 浮遊感のある響き
- ルート音(A)を強調しない分、曖昧な雰囲気
- サスペンデッドコードのような響き
- モーダルジャズで効果的
🎼 活用シーン
曲の中間部分やブリッジセクションで使用すると、一時的に調性感を曖昧にし、神秘的な雰囲気を演出できます。
3つのペンタトニックを組み合わせる実践テクニック
これら3つのペンタトニックを効果的に組み合わせることで、より豊かな表現が可能になります。
基本的な組み合わせパターン
🎵 推奨パターン
- 導入:Aマイナーペンタ(安定感)
- 展開:Bマイナーペンタ(ドリアン色を強調)
- クライマックス:Eマイナーペンタ(浮遊感)
- 終結:Aマイナーペンタ(安定した着地)
コード進行別の使い分け
📊 コード別推奨ペンタトニック
- Am7単独:3つすべて使用可能
- Am7 – D7:Bマイナーペンタが特に効果的
- Am7 – Em7:EマイナーペンタとAマイナーペンタの交互使用
- Am7 – GM7:Bマイナーペンタで6度を強調
ジャンル別の実践例
ジャズでの使用法
ポイント:II-V-I進行のIIm7コードで使用。例:Dm7-G7-CM7の進行でDm7上でDドリアンモードを使用。
特にビバップやモダンジャズでは、Bマイナーペンタトニックを中心に、時折Aマイナーペンタやペンタを織り交ぜることで、複雑さと安定感のバランスを保ちます。
フュージョンでの使用法
フュージョンでは、より自由な発想で3つのペンタトニックを使い分けます:
- シンセサイザーのソロで浮遊感を演出(Eマイナーペンタ)
- ギターソロでドリアンの特性を活かす(Bマイナーペンタ)
- ベースラインで安定感を保つ(Aマイナーペンタ)
ロック・プログレでの使用法
🎸 ロックでの活用
Pink FloydのDavid Gilmourや、Dream TheaterのJohn Petrucciなどが、ドリアンモードとペンタトニックの組み合わせを効果的に使用。特に長尺のギターソロで威力を発揮します。
練習方法:段階的マスタープラン
Step 1:基礎練習(1-2週間)
- Aドリアンスケールを上下に弾く
- 3つのペンタトニックを個別に練習
- 各ペンタトニックの響きの違いを耳で覚える
Step 2:応用練習(2-4週間)
- Am7の一発コードでそれぞれのペンタを使ってアドリブ
- ペンタトニック間の切り替えを練習
- 特性音(F#)を意識的に使う練習
Step 3:実践練習(継続的に)
- 実際の曲のコード進行で練習
- バッキングトラックを使った即興演奏
- 録音して自分の演奏を分析
注意:最初は混乱しやすいので、まずは1つのペンタトニックを完全にマスターしてから次に進むことをお勧めします。
よくある間違いと対処法
間違い1:6度の音を使いすぎる
ドリアンの特性音だからといって、F#を使いすぎると不自然になります。アクセント的に使うのがコツです。
間違い2:ペンタトニックの切り替えが唐突
共通音(A, D, E)を軸にして、スムーズに移行しましょう。
間違い3:コードを無視した使用
背景のコードを聴かず、機械的にペンタを使うのはNG。常にハーモニーを意識しましょう。
まとめ:ドリアンモードの可能性を広げる3つの武器
ドリアンモードで使える3つのペンタトニックスケールは、それぞれ異なる色彩を持っています:
- Aマイナーペンタ:安定感と親しみやすさ
- Bマイナーペンタ:ドリアンの特性を最大限に活かす
- Eマイナーペンタ:浮遊感と神秘性
これらを状況に応じて使い分け、組み合わせることで、あなたの演奏に新たな次元が加わります。ジャズ、フュージョン、プログレッシブロックなど、様々なジャンルで活用できるこのテクニックを、ぜひマスターしてください。
次回は「教会旋法(モード)の実践的な使い方」について、各モードの特徴と実際の楽曲での使用例を詳しく解説します。お楽しみに!


